通院の記録


口角炎 1
   
− メガバクテリアの置き土産 −

ボクの先生は
どこへ行って
しまったのですか?
 

ボクは、口が痛いんだから!



2007年3月21日(水) お誕生日


春分の日は鳥たちの誕生日だ。オカメインコも含め、みんな春分の日にお迎えしたから、この日を誕生日と決めている。
ヤッピーは4歳、チェリーは2歳になった。

こんなにも晴れやかにお誕生日を迎える事ができて嬉しかった。問題はすべて解決し、これからは何もかもうまくいく、そんな気がした。

この日は、久しぶりに何も予定のない休日だった。1日中、どこへも行かず、ゆっくりと鳥たちと過ごす事ができた。一緒に過ごす時間がどれほど貴重なものであるかを、しみじみ思った。


「もう、お薬は飲まなくてもいいんだよ。病院も行かなくてもいいんだよ。ヤッピーさん、本当にご苦労さんだったね!」
最後の通院を終えて以来、ヤッピーの顔を見るたび、そう言っていた。ヤッピーも嬉しそうにそれを聞いていた。


「お誕生日なのに、プレゼントないねぇ。」
ごちそうもない。

どちらも、食餌に制限のある子たちだ。以前なら、器にいっぱいの皮付き餌やペレットのお皿がどーんと並ぶところだが、もう、そんな訳にはいかない。

忙しさにかまけて、久しく豆苗も作っていない。
“餌を変えてメガバクテリアが消えた” と言われたその日から、うっかり変わったものを食べさせて変な事にならないよう、気をつけていた。青菜も、チンゲンサイと小松菜ばっかりだ。

「じゃあ、今日は変わったもの食べようか。」
病院でもらったペレットのサンプルでお祝いする事にした。

この日ばかりは、チェリーもちょっと多めに食べても良い事にした。
“いつから、そんなペレット好きになったのだろう?”と思うほどに大喜びで食べている。



おいしいね

ボクは、やっぱり粉末タイプが好きです


異変に気付いたのは、鳥たちを寝かしつける前の事だった。


メガバクテリアの最後の診察のとき、獣医さんが
「ヤッピーちゃん、またお弁当つけて・・・あ、口内炎・・・口角炎になっちゃう・・・。」とつぶやいて、
「消毒しておきますね。ときどき、拭いてあげてください。」
と消毒をしてくださったのだが、話に夢中になっていて、深くは気に留めていなかった。


言われてみれば、いつもヤッピーは口中ペレットだらけにしている。
1日1回、夜寝る前に拭いてやる事にしたが、どうもキレイにとれない。その日、上下のくちばしのつなぎ目についていた大きな塊を取ってやろうと、コットンを湿らせて念入りに拭いた。前から気になっていたのだが、綿棒では取れなかったのだ。

ところが、ペレットの塊だと思っていたそれは、皮膚がただれて盛り上がり、ねばねばしたところへペレットの粉が付いていたのだと判明した。これでは、いくら拭いてもすぐに粉が付いてしまう。
ヤッピーは何も言わなかったが、さわるとすごく痛いのが分かった。

ちょっと、手に負えないな・・・と思った。
何で、悪化したときの対処法をちゃんと聞いておかなかったのかと、後悔した。
間が悪いとはこの事で、担当の獣医さんは、つい昨日、その病院をおやめになったばかりだ。電話して聞く訳にもいかない。

せっかく、苦労して治していただいたのに、下手に自分で処置して妙な事になってはたまらない。

翌々日、病院へ電話して予約をお願いした。
「治療終了になってますよ。」と言われて、“そりゃそうだ、こんな人、いないよな”と何とも間抜けなこの事態に、おかしいやら情けないやら・・・。


先頭画像のアップ
3月22日撮影

「ヤッピーちゃん、またお弁当つけて」
という獣医さんのセリフは、実は診察のたび何度か聞いていた。

それを、“ヤッピー、かわいい!”くらいにしか思っていなかった。

くちばしの様子がおかしい事は、治療中から気になって何度か獣医さんには相談していたが、診察当日はいつもきれいになっていて、「まあ、大丈夫でしょう」という事になってしまっていた。

何で、もっと早く気付いてやれなかったのだろう・・・と悔やまれた。



2007年3月24日(土) 再び病院へ


足取りも重く病院へ向かった。バツが悪いというのもあったが、すごく不安だった。
現象としては大した事ではないが、メガバクテリアの治療と何か関連があるのだろう。担当してくださった獣医さんがいないという事がとにかく不安でならなかった。治療は終了してしまっているから、次の獣医さんへの引継ぎがどうなっているのか心配だった。治ったとはいえ、ヤッピーは通常とは経過が異なっていた。


後任の獣医さんは、2年前、お世話になったベテランの女医さんであった。
ヤッピーは、この先生を覚えていないようだった。たった1回診て頂いただけだから、仕方ない。
いつもの場所なのに、先生が違うのに驚いたようで、ヤッピーは逃げ惑った。


先生は、ヤッピーを見るなり、
「これは、ちょっとやっかいな事になりましたね・・・。」とおしゃった。

経過をかいつまんで、お話しした。

「右側が口角炎になっています。口角炎になっている子は、口内炎になっている可能性もあるので見てみますね。」

と、口の中をみてくださった。幸い、口内炎にはなっていなかった。
貼りついているものを剥がして、消毒をしていただいた。口角炎の治療には抗生物質を使うのだそうだ。


「ヤッピーちゃんは、皮付き餌からペレットに変えてメガバクテリアが治ったんですよね?」
と聞かれたので、皮付き餌からペレットに切り替えた経緯をお話しした。


中には、ペレットが合わなくて口角炎や口内炎になってしまう子がいます。そういう子は、皮付き餌に戻してもらうと治る事が多いです。くちばしも伸びていますから、かみ合わせも悪くなっているのかもしれませんね。」


ずっこけそうになった。“それを先に言ってくれないか”って感じだ。
そんなありがちな事なら、兆候はあったのだから、先に教えてくれていれば、こんなになる前に対処できたのに・・・。


チェリーは普通にペレットを食べているのに、ヤッピーは首を振りながら食べるのだと言うと、

「チェリーちゃんにはペレットが合うけど、ヤッピーちゃんには合わないんでしょう。」

やれやれ、ヤッピーはペレットに切り替えてお腹の調子は良くなったのに、口には合わないっていう事なのか・・・。


「皮付き餌に戻すとまた出ちゃう可能性があります。」という、前の獣医さんの言葉は、ずっと耳に残っていた。(それで言えなかったのかな、という気もしないでもないが・・・)

その事を説明して、できれば皮付き餌に戻すことはしたくないとお話しした。その問題がなくても、チェリーの事もあるから、ヤッピーだけ皮付き餌という訳にはいかない。


「メガバクテリアが完全に胃から出てしまっていれば、再発の可能性はありません。まだ残っている場合には再発してしまうかもしれませんから、抗生物質に抗真菌剤もプラスして、出ないようにおさえます。」


足がすくむ思いがした。半年後、1年後というのであれば、また皮付き餌をあげる事もあるかもしれないとは思っていたが、治って間もない現時点で皮付き餌に戻すことは恐怖だった。


「ヤッピーちゃんに皮付き餌をあげるときは、仕切りをしてチェリーちゃんに見えないようにしてください。」
獣医さんが変われば、また違う知恵も教えていただけるのでありがたい。



与えているペレットの種類を聞かれたので、ズプリームに加え、先週からはハリソンスーパーファイン(粒状)、ハリソンマッシュ(粉末)、ケイティの3種類を与えている事をお話しした。(キャリーには、ズプリームとハリソンマッシュを入れていた。)


「ズプリームがダメなら、他のも同じようなものなので、ダメな可能性が高いです。ハリソンなら、もしかしたらOKかもしれませんけど・・・。」


ハリソンのスーパーファインとマッシュは形状の他に成分の違いがあるのかお聞きした。どれもよく食べるがヤッピーのお気に入りはハリソンマッシュだ。

「マッシュの方がやや高タンパクですけど、殆ど同じです。ヤッピーちゃん、マッシュ食べますか?」

ヤッピーが気に入っていた事に加え、粉末の方が噛み砕く手間がなく食べやすそうだったため、前日よりヤッピーにはズプリームとマッシュを半々で与えていた。


「マッシュはかなり頑張って食べないと栄養が取れないんですけど・・・でも、マッシュなら口に付きにくいかもしれません。今、口に付いていたの、みんなズプリームですものね。では、ペレットはズプリームを減らす方向でマッシュに変えて、皮付き餌を半分あげるようにしてください。


「ヤッピーちゃんは、直接投与じゃないとダメなんでしたね・・・甘い方のお薬ですね・・・。」

先生はカルテを見ながら、そう言って、「あっ、でも・・・」とちょっと口ごもった。

そう、甘い薬は粘性が高いのだ。

一時的に薬を飲むのが嫌になったときに変えてもらっただけなので、今は大丈夫であろうと思い、より良い方をという事で、甘くない方の薬をお願いした。


薬は1日2回、1滴ずつ。
ストレスにならない頻度で消毒をするようにとの事だ(2日に1回程度で可)。
消毒の際の保定の仕方を教えていただいた。

次回は、1週間後。





皮付き餌を与えることは、本当に怖かった。理論的に大丈夫と分かっていてもだ。
“あたって砕けろだ!”と一瞬思ったが、この場合、砕けてしまうのはヤッピーだ。

これが自分の文鳥でなければ、面白すぎる展開なんだけど・・・。
どうして、こうなっちゃうんだろう?
やってみるしかなかった。


帰りの電車の中、いつもならおとなしくしているヤッピーが何度も呼び鳴きをして、ジタバタしていた。

「どうしちゃったの? 楽しいお出かけだよ。」

大好きだった先生にもう会えないことを知ったのか? 他に理由があるのか? さっぱり分からなかった。





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